<工事名>平成31年度 福野曳山横町車輪、車軸修繕工事
<工事期間>令和元年5月5日~令和2年3月23日
<概要>
横町曳山の製作年は不明。旧福野町の開町(1650年)からさほど遠くない時代に製作されたと考えられている。現存する古文書には1847年に曳山修繕および完成に向けて「毎日掛銭の制」を設け組頭4人の取りまとめで事業資金の蓄積を開始したとある。
曳山の本座は猩々。相座はからくり人形の唐子となっている。高欄は一位高欄腰重子彫り。上壇は神代木雲龍彫り、中壇は水浪、下壇は如鱗杢牡丹獅子彫り。地山は巌石獅子彫り。最上部にある鉾留は鼓。
車輪は鉄輪の緩みが生じており外れる可能性が高い状態であり、それに伴い扇材には割れ、欠け等の損傷も生じている。またカブラ材には、痩せが生じ多きく動く状態であり、矢板金具への擦れ、潰れが部分的に生じている。
車軸は長年の使用により部分的に割れが見られるとともに車輪カブラ材の痩せによる動きが車軸への負担を大きく与えているのではないかと思われる。
車輪及び車軸は曳山全体を支える大事な部分であることから奉曳の安全を考慮し修理を行う。
<修理概要>
[修理前] 長年の使用により、彩色の剥離・剥落が進行している上、底板部分には虫食いの後が見られる。また、木部について摩耗や欠損、過去の埋め木やコクソ補修が行われた形跡がある。
木部の損傷も大きく、虫食いも多数見られる。
- 木工(鉄工)-
搬出作業
車輪4輪、車軸2本の取り外し作業
現状確認作業、解体作業
木部修繕作業、鉄工作業
仮組・焼嵌め作業
車軸制作作業
搬入作業、組立
- 漆工 –
漆工修繕作業(下地、塗り作業)
各部材を水拭き→アンモニア水にて洗浄→下研ぎ、部分的にタッチアップ
木地固め、木部補修部分や亀裂部分へコクソ彫り、コクソ付け
錆地付け→乾燥後、砥石で水研ぎを行う(下地作業を約2回繰り返し平滑面に整える)
黒呂色漆を塗り、乾燥後炭研ぎ
アンモニア水にて拭き上げ→下地研ぎ→コクソ彫り、部分的にコクソ付け→下地付け、下地塗り→中塗り→上塗り→呂色仕上げ
・矢板側面への加飾作業(錫粉・透き漆)
・裏面補強金具、カブラ鉄輪を黒漆塗り
- 金工 –
飾金具取外
無水エタノールによる洗浄
反り・歪みの修正、破断部分の溶接
既存真鍮釘の選別・整形、新調釘古色整色
金具表面保護のためインクララックを塗布
飾り金具取付け(矢板金具、カブラ金具、扇金具)
釘頭へのインクララックを塗布